新築住宅の計画を進めると、「図面作成が有料」という外構業者を見かけることがあると思います。
「有料なら無料の会社に頼めばいい」と思う方もいるかもしれません。
でも、ちょっと待ってください。 その“無料”は本当にお得でしょうか?
外構業者の立場から見れば、図面を描くにも現地調査にも、”必ず”人件費がかかるのです。
それが“無料”で提供されているということは、「最終的には契約されたお客様が、他の方の図面作成コストまで負担している」という構図も…。つまり、図面無料というのは、実際は表向きが無料なだけなのです。
そんな背景もあり、最近では図面を「有料」にする会社も増えてきました。
この記事では、外構図面の基本的な役割から、有料化が進んでいる理由、そしてお客様にとってのメリット・注意点まで、プロの視点でわかりやすくお伝えしていきます。
外構図面って何のためにあるの?

外構工事は“まだ存在しない空間”を形にする仕事です。そのため、完成イメージや工事内容を共有するために図面が重要になります。
図面があることで、お客様とも職人とも施工範囲やデザインのイメージを共有できるため、打ち合わせ内容の行き違いや、「イメージと違った…」といった施工後の後悔を防ぐことができます。
外構図面にはどんな種類がある?
外構図面には、用途に応じていくつか種類があります。ここでは、代表的な3つをご紹介します。
平面図
外構全体の配置やサイズ感が分かる、もっとも基本的な図面です。
建物の配置図に対して、階段やアプローチ、駐車スペース、植栽の位置などを上から見た形で描き込みます。
動線の取り方や空間の使い方、施工の範囲などを確認できるので、打ち合わせのベースとして非常に重要です。実際の現場でも、この図面をもとに「どこに何をつくるか」の位置出しを行います。

弊社では図面上にアルファベットの記号を振り、それを仕様書と連動させて詳しい材料や仕上げ内容を管理しています(※会社によってスタイルは異なります)
立面図
立面図は、敷地の高低差や段差など、見た目では分かりにくい「縦の関係」を明確にできる図面です。
特に重要なのが、「設計GL(家を建てる高さ)」と「道路GL(道路の高さ)」の違いです。この高低差を確認することで、敷地の傾斜や土留めの高さ、窓の目隠し、車と上部の障害物の関係など、高さにまつわるさまざまな検討ができます。

パース図
完成後のイメージを立体的に確認できる図面です。外構工事は契約時に完成形が存在しないため、3Dで視覚化できるパース図はお客様にとって大きな安心材料になります。
もちろん、イメージと実際の仕上がりが多少異なる場合もありますが、それでも事前にイメージを共有しておくことは非常に重要です。
外構は毎日目に入る空間。だからこそ、契約前に立体で確認しておくことで、満足度の高い外構づくりに繋がります。

なぜ図面が有料に?その背景と理由

図面を無料で提供している会社も多い中、近年では「図面は有料」と明示する会社も増えています。
実際に、弊社でも2024年12月以降、図面と御見積の作成を有料化しています(※ただし、ご契約いただいた場合は図面費用はかかりません)。
全国的にも、同様の対応をする外構業者が徐々に増えており、業界全体で“適正な価値”を見直そうという流れがあると感じます。
ここでは、有料化の背景とそのメリットを「お客様目線」「業者目線」両方から解説します。
【お客様目線】 無料だから…と気軽に依頼して本末転倒に
- 費用感やデザインの方向性が全く異なる会社に相見積もりしている
- 相見積もりしている会社が多すぎる
このような場合、業者の対応が表面的になりやすく、結果的に質の高い提案が得られず、打ち合わせの時間が無駄になってしまうことも。
【業者目線】 質の高い提案がしづらくなる
- 契約につながらない案件に時間と労力を使ってしまい、本当に工事を望むお客様への対応時間が削られる
- 本来あってはいけないことだが、プランだけ持っていかれるケースも
これでは元も子もありません。だからこそ、本気で依頼を検討しているお客様に、より深く向き合える体制を整えるために、「図面の有料化」を進める会社が増えているのです。
弊社が「外構図面有料化」を取り入れた理由

弊社が思い切って「図面有料化」に切り替えた背景には、より誠実に・丁寧に・本気で向き合ってくださるお客様に、質の高いプランをご提供したいという想いがあります。
私たちが図面を有料にする決断をした理由をご紹介します。
1.お客様に寄り添ったプランを出すため
一番の理由は、 『御社のデザインが好きで依頼しました』といった本気で工事をお願いしたいお客様に、よりデザイン精度が高いプランを準備するためです。
図面を有料化して依頼件数を減らすことで、例えば「打ち合わせ通りのプラン」、「希望を全部盛り込んだプラン」、「予算内に収めたプラン」、など複数のプランを準備するができたりと、本気のお客様にしっかり向き合うことができるようになりました。
2.施工の精度を高めるため
弊社では、平面図・立面図・パース図に加えて「仕様書」も作成しています。必要な寸法も盛り込みながら、お客様にも現場にもわかりやすい図面を心がけています。
また、必要に応じて職人向けの「施工詳細図」を用意することもあります。一件ずつの図面の精度を上げることで情報伝達がスムーズになり、これも図面を有料化した理由の一つです。
図面がしっかりしていると、現場の作業も迷いなく進みます。施工ミスの防止や工期短縮にもつながり、お客様にとっても職人にとってもメリットの多い取り組みだと考えています。
3.プランの盗用を無くすため
納まりを何度も検証して、やっとのことで形にしたデザイン案が、キャンセル後に他社でそのまま施工されていた——。
そんな経験が過去に何度もあり、設計者として非常に悲しい思いをしています。たまたまそのお宅の前を通りかかった際、目にするたびにやるせない気持ちになります。
こうした「図面の盗用」を防ぐために、日本エクステリア設計協会では、エクステリア&ガーデンデザイナーの知的財産を守る取り組みとして、『設計図面盗用防止活動』を行っています。
その中で掲げられているのが、“図面を他社に横流ししない”という注意喚起を含む『ニューモラルスタンダード』という考え方です。
簡単にいうと、悪質な会社が「他社の図面があれば作図にかかる人件費を削減できるので、安く工事できます」と言い、他社のプランで工事を受注してしまうようなケースです。
このような行為の問題点は、大きく分けて以下の2つにあります。
- 知的財産の侵害
- 手抜き工事の助長
図面を他社に渡さないようにしよう、というのは、業界全体で進められている取り組みです。
それでも、図面盗用のような事例が後を絶たない中で、「図面の有料化」も、必要な時代に入ってきたのではないかと感じています。
※なお、弊社における図面有料化は、デザインを「商品」として販売しているのではなく、あくまでも作図・積算・現地調査などにかかる人件費の一部として費用を頂戴しているものです。なお、図面の著作権は弊社に帰属します。
4.相見積もり過多への対応のため
「とりあえず見積だけ」という軽いご依頼が増えすぎた結果、本気でご検討いただいているお客様への対応がどうしても後回しになってしまうことがありました。
図面を有料にすることで、真剣にご相談くださるお客様とじっくり向き合えるようになり、一件一件の提案の質もより高められるようになったと感じています。
また、現場に足を運ぶ時間や、新しい素材の研究、法改正への対応といった学びの時間もしっかり取れるようになり、サービス全体の質の向上にもつながっています。
お客様が「有料の図面」を依頼する際の注意点
では、有料の図面を依頼する際、どういったことに注意する必要があるのでしょうか?
【注意点①】図面を依頼する業者を絞り込む
図面が有料の場合、複数の会社に同時に依頼してしまうと、それだけ費用もかさんでしまいます。そのため、事前に「本当にお願いしたい会社」をしっかり見極めてから相談するのがポイントです。
例えば、以下のような観点から検討してみてください。
- ・好きな事例を多く造っている会社を見つける
-
→理想の外構を実現する近道になります。
- ・デザインには言葉を超えた“感覚”も大切
-
→直感的に「好きだな」と感じる事例が多い会社は、センスや価値観の相性が良いことが多いです。
- ・工事品質やアフター対応も要チェック
-
外構は長く暮らす空間の一部。品質や保証などの考え方にも納得できる会社を選びましょう。
まずは、各社のWebサイトやインスタグラムなどで施工事例を見比べてみてください。デザインの好み、会社の姿勢や考え方に共感できるかどうかが、業者選びの重要なヒントになります。
ちなみに、弊社のインスタグラムでも施工事例をご紹介しています。
【注意点②】図面の“権利”や費用の内訳を確認する
有料図面を依頼する際には、「何に対してお金を払うのか」を事前に確認することも大切です。
例えば弊社では、初回の図面は有料ですが、これは作図や現地調査など実務的な費用の一部であり、デザイン費そのものではありません。そのため、作成した図面の著作権は弊社に帰属しており、他社への持ち込みや流用はできない仕組みです。
図面が有料だからといって、「そのまま自由に使える権利がもらえる」わけではない、という点にはご注意ください。
だからこそ、本当にお願いしたい会社をしっかり選んでから依頼することが、満足のいく外構づくりにつながります。
実際の事例紹介
外構工事は、まだ存在しない空間に価値を与える仕事です。だからこそ、契約前に完成イメージをしっかりと共有することが大切です。
弊社では、その手段として3Dパース図のご提案を重視しており、「図面有料化」によって精度の高いイメージをお届けできる体制を整えています。ここでは、実際に弊社でご提案したパースと、完成後の施工写真を比較してご紹介します。
実際の施工事例で比較してみました
以前施工させていただいた現場で、パース図と実際の完成写真(※スマートフォン撮影のため画質は粗めです)を比較してみました。
完全に一致するわけではありませんが、イメージはかなり近いものになります。パースで完成後の姿を共有することで、お客様も安心して進められ、現場でのやり取りもスムーズになります。
図面有料化はお客様・業者双方にとって前向きな選択肢だと考えています。
初期費用がかかる点は不安かもしれませんが(※弊社はご契約いただいた場合、図面費用はいただいておりません)、結果的に丁寧で満足度の高い外構づくりにつながると実感しています。
まとめ
一見お得に見える無料図面ですが、実際には有料図面のほうが丁寧にプランを練ってもらえるケースが多く、満足度の高い外構につながることも少なくありません。
どちらが正解というわけではありませんが、大切なのは「誰に外構をお願いしたいか」という視点です。気になる会社があれば、たとえ図面が有料でも、ぜひ一歩踏み出して相談してみてください。
弊社の施工事例やデザインテイストが気になる方は、公式サイトもぜひご覧ください。きっと理想の外構を考えるヒントが見つかるはずです。
理想の外構が実現し、素敵な外構が街に増えていく——そんな未来を、私たちも楽しみにしています。